6月から夏にかけて京都を訪れると、多くの人が小さな扇を手にしていることに気づくかもしれません。
伏見稲荷大社へ向かう参道を歩く人。東本願寺の前を行き交う人。浴衣姿で夏祭りを楽しむ人。
京都の夏において、「扇子(せんす)」は単なる暑さ対策の道具ではありません。
そこには、四季を慈しむ心や相手を思いやる所作、そして美しく歳月を重ねてきた日本ならではの美意識が息づいています。
軽く、かさばらず、必要なときにそっと風を届けてくれる扇子。
千年以上にわたり受け継がれてきたこの小さな道具は、現代の旅においても変わらず活躍しています。
伏見稲荷の千本鳥居を巡るひとときも、京都の街を歩く時間も、お気に入りの扇子があれば少しだけ心地よく、豊かなものになるかもしれません。
今回は、日本の扇子文化の歴史や魅力、京都観光での楽しみ方、そして旅のお供におすすめの扇子をご紹介します。

| 目次 |
1.扇子とは? 日本で生まれた折りたたむ美

扇子とは、竹の骨組みに紙や布を貼り、折りたたんで持ち運べる日本の伝統的な扇のことです。
英語では「Folding Fan」と呼ばれています。
現在では世界各地で使われている折りたたみ式の扇ですが、その起源は日本にあるとされています。
閉じればコンパクトに持ち運ぶことができ、必要なときだけ広げて使える実用性。
そして、広げたときに現れる繊細な絵柄や美しい意匠。
機能性と美しさを兼ね備えた扇子は、日本人の暮らしに寄り添いながら千年以上受け継がれてきました。
暑い季節の必需品としてだけでなく、礼儀作法や芸能、贈答文化の中にも深く根付いていることが、扇子ならではの特徴です。
2.扇子の歴史と京都との深い関わり
扇子の歴史は、平安時代にまでさかのぼります。
もともとは「檜扇(ひおうぎ)」と呼ばれる木簡を束ねたものが原型で、宮廷の貴族たちが儀式や身だしなみの一部として使用していました。
やがて竹と和紙を用いた現在の形へと発展し、その技術は日本各地へ広がっていきます。
なかでも京都は、茶道や能、日本舞踊などの伝統文化とともに扇子文化が発展してきた特別な土地です。
茶席では礼儀を表す道具として。
舞台では感情や季節を表現する小道具として。
祭礼では縁起物として。
扇子は、単なる日用品を超えた存在として人々に親しまれてきました。
また、扇子の形は先に向かって広がっていくことから「末広(すえひろ)」とも呼ばれています。
その姿には、
「未来への発展」
「幸運が広がること」
「家の繁栄」
といった願いが込められ、結婚祝いや贈りものとしても大切にされてきました。
小さな扇の中には、日本人の祈りや美意識が今も受け継がれているのです。
3.なぜ日本人は扇子を愛してきたのか
冷房が普及した現代においても、夏になると扇子を持ち歩く人は少なくありません。
それは単なる習慣ではなく、日本人ならではの価値観が関係しているのかもしれません。
扇子に込められた3つの美意識
四季を楽しむ心
桜、朝顔、金魚、紅葉、梅など、日本では季節に合わせて扇子の柄を選ぶ楽しみがあります。暮らしの中で四季を感じる感性は、日本文化を象徴する美しさのひとつです。
相手を思いやる所作
自分だけでなく、隣にいる人にも心地よさを届ける。公共の場では周囲への配慮を忘れず、静かに風を送ることが美しい所作とされてきました。
「涼」を味わう感覚
日本には、視覚や音、風によって暑さを和らげる「涼」の文化があります。扇子はその代表的な存在であり、風鈴やガラスの器と並び、日本の夏を彩る知恵でもあります。
暑さを完全になくすのではなく、自然の風を取り入れながら心地よく過ごす。
そんな考え方は、現代の暮らしにも新鮮な気づきを与えてくれるかもしれません。
4.伏見稲荷を歩くなら、扇子があると心強い理由
伏見稲荷大社は、京都でも有数の人気観光地として知られています。
千本鳥居を抜け、奥社奉拝所を経て、さらに稲荷山の山頂へ続く「お山めぐり」は、京都らしい風景と信仰文化を体感できる特別な体験です。
しかし、6月以降の京都は気温だけでなく湿度も高く、想像以上に体力を消耗します。
特に伏見稲荷では、
- 千本鳥居を歩く参道
- 稲荷山のお山めぐり
- 休憩所でひと息つく時間
- JR稲荷駅のホームで電車を待つ時間
- カフェのテラス席
など、屋外で過ごす時間が多くあります。
そんなとき、バッグにひとつ扇子を忍ばせておけば、必要なときにそっと風を送ることができます。
軽く、かさばらず、電池も不要。
充電切れを気にすることなく使える扇子は、昔から受け継がれてきた京都観光の知恵とも言えるでしょう。
伏見稲荷の散策を予定している方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
歩く距離や所要時間、おすすめの持ち物なども詳しくご紹介しています。
5.扇子を使う際のマナー
日本では、扇子は礼儀の道具としての側面も持っています。
ほんの少しの気遣いによって、より美しく使うことができます。
扇子を使う際の基本的なマナー
■ 人に向けて強くあおがない
公共の場では周囲への配慮を忘れず、静かにあおぐことを心がけましょう。
■ 食事中の使用は控えめに
料理や周囲の人に風が当たりすぎないよう気を配ることも大切です。
■ 丁寧に開閉する
無理に広げたり勢いよく閉じたりすると破損の原因になります。竹や和紙は繊細な素材です。
■ 水濡れを避ける
使用後はしっかり乾燥させ、直射日光を避けて保管すると長く愛用できます。
扇子の正しい開き方・閉じ方
実は、扇子には美しく長く使うための所作があります。
無理に勢いよく開くのではなく、竹の骨をいたわりながら扱うことで、より長く愛用することができます。
■ 開き方
扇子の要(かなめ)部分を持ち、親骨を少しずつずらしながらゆっくりと広げます。最後まで一気に開くのではなく、途中まで広げてから整えるように開くと、骨への負担を軽減できます。
■ 持ち方
要の部分を軽く持ち、手首を使ってやさしく風を送ります。大きく振るのではなく、静かにあおぐことで上品な所作になります。
■ 閉じ方
両手で骨を揃えるようにしながら、ゆっくりと閉じます。紙や布の部分を無理に押し込まず、形を整えるように畳むことで、美しい状態を保つことができます。
■ 保管方法
使用後は汗や湿気を軽く乾かし、直射日光を避けて保管しましょう。扇子袋や箱に入れておくと、汚れや変形を防ぐことができます。
日本では古くから、道具を丁寧に扱うことは作り手への敬意でもあると考えられてきました。
お気に入りの一本だからこそ、少しだけ手をかけながら長く使い続ける。その時間もまた、扇子の魅力のひとつです。
長く大切に使うこと。
それもまた、日本のものづくりに対する敬意の表れなのかもしれません。
6.朱 SHU by Vermillionで出会う扇子
伏見稲荷大社近くの当店では、参拝の記念や日本の美意識を日常へ持ち帰っていただけるよう、暮らしに寄り添う工芸品や生活道具をご紹介しています。
夏の京都を快適に過ごすための扇子も、そのひとつ。
古くから受け継がれてきた日本の知恵と職人の技を感じられる一本は、旅先で役立つ実用品であると同時に、京都での思い出を持ち帰る特別なお土産にもなります。
実際に手に取り、開いたときの軽さや風のやわらかさを感じながら、ご自身に合った一本を見つけてみてください。
そして、もし京都駅方面へ向かわれる予定があれば、ぜひ姉妹店「Vermillion - station.」にも足を運んでみてください。
JR奈良線を利用すれば、JR稲荷駅から京都駅までは約5分。京都駅から徒歩約8分、東本願寺前に位置するVermillion - station.では、2026年6月8日(月)〜6月30日(火)までの期間限定で、西川庄六商店の扇子をご紹介するPOP UPを開催しています。
普段は店頭に並ばないデザインや、実際に手に取って風の心地よさを確かめられるこの機会は、まさに京都の夏支度にぴったり。
カフェとショップが併設された食・もの・体験の複合施設として、旅の途中でコーヒーを片手にひと息つきながら、日本各地のものづくりに触れていただけます。
伏見稲荷で日本文化に出会い、京都駅でその魅力をさらに深く味わう。
そんな京都らしい時間の過ごし方も、ぜひお楽しみください。
期間限定|西川庄六商店 扇子 POP UP
開催期間
2026年6月8日(月)〜6月30日(火)
Vermillion - station.
カフェとショップが併設された食・もの・体験の複合施設。
京都駅徒歩約8分・東本願寺前。
JR稲荷駅から京都駅まで約5分+徒歩約8分。
旅の締めくくりに、日本の夏を彩るお気に入りの一本を見つけてみませんか。
西川庄六商店とは
西川庄六商店は、滋賀県近江八幡にルーツを持つ老舗です。
「扇子をもっと身近な存在に」という想いのもと、伝統的な技術を大切にしながら、現代のライフスタイルに寄り添う新しい扇子づくりを続けています。
長年受け継がれてきた職人の技と、現代的なデザイン。
その絶妙なバランスこそが、西川庄六商店の魅力です。
ビジネスシーンにも馴染むシンプルなものから、遊び心あふれるデザインまで。
日本の伝統工芸を、もっと自由に楽しむきっかけを提案しています。
実際に手に取り、広げたときの軽さや風のやわらかさを感じられるのも、POP UPならではの魅力です。
7.おすすめの扇子と関連アイテム
ここでは、POP UPでご紹介しているおすすめのアイテムをご紹介します。
旅の思い出としてはもちろん、毎日の暮らしにも寄り添ってくれるものばかりです。
使わないときはお気に入りの扇子を飾って楽しめる専用スタンド。 旅の思い出をインテリアとして暮らしの中に取り入れることができます。
実用品としてだけでなく、ひとつの工芸品として扇子を愛でる楽しみ方を提案してくれるアイテムです。

8.まとめ
京都の夏を歩くとき、扇子は暑さを和らげるための道具であると同時に、日本の美意識や思いやりの文化を感じさせてくれる存在です。
小さな扇をひとたび開けば、そこには千年以上受け継がれてきた知恵と職人の技、そして四季を愛でる心が広がっています。
伏見稲荷の千本鳥居をくぐり、京都の街並みに耳を澄ませながら、そっと扇子で風を送るひととき。
その何気ない時間こそ、日本の旅をより深く、豊かなものにしてくれるのかもしれません。
そして旅を終えたあとも、その扇子を手に取るたびに、京都で過ごした夏の記憶がよみがえるでしょう。
ぜひお気に入りの一本を見つけ、日本ならではの「涼」と「美」を暮らしの中で楽しんでみてください。




